ヴァイオリン練習教材について(初心者~中級者向け)
教室ではこれまで、市販されている教本や楽譜だけではカバーしきれない部分を補うために、レッスンの中でさまざまな練習教材を作成してきました。
今回は、そうしたレッスンの中から生まれた教材を整理し、改めて「練習する」ということについて考えてみたいと思います。
市販の教本だけでは足りない部分を補う
ヴァイオリンを始めたばかりの方であれば、まずは市販の教本を使って、音の出し方、弓の使い方、左手の押さえ方、音符の読み方などを一つずつ学んでいくことになります。
教本には、初心者が無理なく上達できるよう、さまざまな工夫がされています。
ただ、実際にレッスンをしていると、「ここをもう少し細かく練習したい」「この技術を身につけるために、もう一段階手前の練習が必要」と感じる場面も少なくありません。
そこで教室では、メインで使用する教本の内容に沿いながら、それをより細かく、段階的に練習できるような「基礎トレーニングメニュー」を作成し、レッスンで使用してきました。
例えば、教本の中では一つの課題として扱われている内容を、さらにいくつかの段階に分けて練習する。
あるいは、曲を弾くために必要になる技術を、曲そのものとは別に取り出して練習する。
そうすることで、「曲を弾いているうちに何となくできるようになる」のではなく、「必要な技術を先に練習しておき、それを曲の中で使えるようにする」という流れを作っています。
今回、このような基礎トレーニングメニューを一つにまとめました。
基本的な内容は、普段レッスンで生徒さんにお渡ししているものと大きく変わりません。
もちろん、レッスンの進み方や生徒さんの習熟度によって、実際には使用していないメニューもあります。
すべてを同じペースで進める必要はありませんが、理想を言えば、一度は一通り触れておいてほしい内容です。
「今は必要ないように見えるけれど、後になってから意味が分かる」という練習もあります。
一人でも練習できる教材に
もう一つ、今回教材をまとめるうえで意識したのが、「初心者ができるだけ一人でも練習できるようにする」ということです。
初心者の方の場合、レッスンではできたのに、家に帰ると「結局どうやって練習すればいいのか分からない」ということがよくあります。
そこで、教材だけではなく、YouTube上にも練習用の動画を用意しました。
実際の動きを映像で確認しながら、説明を聞き、模範演奏に合わせて練習できるようにしています。
もちろん、動画を見ればレッスンが必要なくなるという意味ではありません。
ヴァイオリンは、自分では気づきにくい姿勢や弓の動き、音程、音色などが非常に多い楽器です。
それでも、「家で何をすればいいのか分からない」という状態を少しでも減らし、レッスンで習ったことを自宅で再現しやすくすることには意味があると考えています。
もう一つの教材――「曲をどう練習するか」
今回、新たに作成・販売を始めたのが、実際の楽曲を題材にした「分析的アプローチによる練習教材」です。
こちらの教材で特に重視しているのが、「部分練習の具体化」です。
ヴァイオリンをある程度習っている方なら、「部分練習をしましょう」「苦手なところを取り出して練習しましょう」と、一度は言われたことがあると思います。
しかし、実際に家で練習すると、意外とこれが難しいものです。
例えば曲を最初から最後まで弾いて、間違えたところがあった。
そこで、もう一度最初から弾く。
また間違える。
そして、もう一度最初から……。
こうして、曲を何回も通して弾いているだけ、ということがあります。
もちろん、教本の1巻などを勉強している初心者の段階であれば、これもある程度は仕方ありません。
曲自体が短く、技術的な要求もまだそれほど高くないため、何度も通して弾くことで自然に弾けるようになることもあります。
ところが、教本が進み、曲の難易度が上がってくると、状況が変わってきます。
「通して弾く」だけでは足りなくなる
教本が進んでいるということは、もちろん自分自身の技術も上がっているはずです。
しかし、それ以上に曲の難易度も上がっていきます。
音符が増える。
ポジション移動が複雑になる。
弓の使い方が難しくなる。
スラーやアーティキュレーションが複雑になる。
リズムが難しくなる。
速いパッセージが出てくる。
そして、これらが同時に要求されるようになります。
こうなると、「とりあえず最初から最後まで弾く」という練習だけでは、なかなか弾けるようになりません。
そこで先生から、
「ここだけ取り出して練習しましょう」
「リズムを変えて練習してみましょう」
「ゆっくり練習しましょう」
「部分練習をしましょう」
といったアドバイスを受けることになります。
しかし、ここにも一つ問題があります。 「
工夫した練習をしなさい」と言われても、その“工夫”自体が難しいのです。
練習の「引き出し」を増やす
効果的な練習をするためには、練習方法の「引き出し」が必要です。
例えば、昔からよく使われる「付点リズムで練習する」「スラーの組み合わせを変えて練習する」といった方法があります。
これらは非常に有効な練習方法です。
ただし、それを知っているだけでは十分ではありません。
「どこに使うのか」
「どのくらいの範囲を取り出すのか」
「どのパターンで練習するのか」
といったことまで考える必要があります。
つまり、練習方法そのものを知識として持っているだけではなく、「この部分には、この練習が有効だ」と判断できることが重要なのです。
これは、ある程度の経験がないとなかなか難しいことです。
初心者から中級者くらいの段階では、まだ練習方法の引き出しがそれほど多くありません。
だからこそ、その引き出しを増やすための教材があってもよいのではないか、と考えました。
「楽譜を細かく分解して練習する」
今回作成した「分析的アプローチによる練習教材」では、単純に曲を弾くための楽譜を提供するのではなく、その曲を構成している要素を細かく取り出し、練習できるようにしています。
例えば、難しいパッセージがあった場合、その部分をただ何度も繰り返すのではありません。
音の並び、運指、弓のパターン、リズム、スラーなど、必要に応じてさまざまな角度から分解します。
そして、元の楽譜とは違った形で練習し、最終的に元の形へ戻していきます。
言ってみれば、「曲を弾く」のではなく、「曲を分析して、弾けない原因を一つずつ取り出して練習する」という考え方です。
現在はザイツやヴィヴァルディなど
現在、作成している教材は、主に初心者から中級程度の段階で取り組む楽曲を対象としています。
例えば、ザイツのヴァイオリン協奏曲や、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲などです。
まだ数曲分しかありませんが、今後、レッスンで実際に使用する機会の多い作品を中心に、少しずつ増やしていければと思っています。
この教材の目的は、単に「この曲を弾けるようにする」ことだけではありません。
最終的には、この教材がなくても、自分で練習方法を考えられるようになってほしいと思っています。
「ここが難しいから、この部分を取り出そう」
「この音型はこういうパターンにしてみよう」
「この運指が安定しないから、まずはこの範囲だけ繰り返そう」
といったように、自分自身で練習方法を組み立てられるようになることです。
その意味では、この教材そのものよりも、そこに掲載されている練習方法や考え方を「練習のアイデア集」として使ってもらえたらと思っています。
誰にでも必要な教材、というわけではありません
一方で、このような教材は、誰にでも向いているわけではありません。
特に、楽譜を読むことがまだ十分にできない段階では、かえって扱いにくい場合があります。
耳でメロディーを覚えて、何となく弾けるようになっている状態で、楽譜を細かく分解して練習しようとすると、かえって混乱してしまうこともあります。
そのため、現在は初心者の楽曲は除外し、あえて対象を中級あたりの楽曲に絞っています。
逆に、さらに難しい作品に取り組める段階まで進んでいる方であれば、すでに自分なりの練習方法やアイデアを持っていることも多いでしょう。
その段階では、こうした「補助教材」がなくても、自分で課題を見つけ、自分に必要な練習を組み立てられることが理想だと思います。
「練習の仕方」も身につけてほしい
ヴァイオリンを習う目的は、もちろん曲を弾けるようになることです。
しかし、それと同じくらい、「自分で練習できるようになること」も大切だと考えています。
レッスン中は先生が「ここをこうしましょう」と教えてくれます。
でも、毎日の練習でずっと先生が隣にいるわけではありません。
自宅に帰ったら、自分一人で楽譜を見て、自分の音を聴いて、どこができていないのかを考えなければなりません。
そのときに、「最初から最後まで何となく弾く」以外の方法をどれだけ知っているかで、練習の質は大きく変わります。
最初は教材に書いてある通りに練習しても構いません。
「この部分を取り出す」
「このリズムに変える」
「このパターンで繰り返す」
といった経験を少しずつ積み重ねていく。
そうすると、いつか「ここはこの練習をしたら良さそうだ」と、自分で考えられるようになります。
そのための材料として、この教材を活用してもらえればと思っています。
今回まとめた二つの教材には、それぞれ少し違った役割があります。
初心者向けの「基礎トレーニングメニュー」は、普段のレッスンを補助するための教材です。
こちらは教室の生徒さんには普段のレッスン時に無料でお配りしています。
一方、実際の楽曲を題材にした「分析的アプローチによる練習教材」は、特定の作品をより具体的に練習するための教材として、現在こちらで販売しています。
今後も、レッスンをしていく中で「こういう練習があると便利だな」と感じたものについては、教材として少しずつ形にしていく予定です。
曲を弾けるようになることはもちろん大切です。
でも、その先にある「自分で課題を見つけ、自分で練習方法を考え、自分の力で弾けるようになる」というところまで、少しずつ身につけていってほしい。
今回作成した教材が、そのための一つのきっかけになればと思っています。
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